朝日俳壇と歌壇を読んだ

まず、俳壇から
<一歳と八十路が遊歩山笑う(横浜市 御殿兼伍)>⇒大串章選:
 ⇒大串さんのコメントはこうだ。<「一歳と八十路」が微笑ましい。「山笑う」が効いている。> 調べると、「山笑う」は春の季語。夏は、「山滴る」、秋は、「山粧う」、冬の季語は「山眠る」なんだって。

<暗やみに余熱のような梅の花厚木市 北村純一)>⇒高山れおな選:⇒このう句も難しいね。「余熱のような」という比喩が非凡だと思う。
<汀子逝く花鳥の嘆き涅槃西風(和歌山県日高町 市ノ瀬翔子)>⇒長谷川櫂選:朝日俳壇の選者だった稲畑汀子さんが、辞任して間もなくお亡くなりになった。稲畑さんは虚子の親族で、「あららぎ」を継承してきた人なんだと知った。金子兜太とちがって、花鳥風月と季語を大事にして伝統を墨守してきたんだという。
 それにしても、俳句の短い切り口(17文字)は難しいね。

 今週の俳壇も常連の入選者が沢山いる。朝日俳壇グループがいるんだと思う。

<「侵攻」や「開戦」の字が急速に幅を利かせて紙面蒼ざむ(東京都 十亀弘史)>
<歩けなくなれるこの日のためにこそ歌詠み来しやありがとう歌(和泉市 長尾幹也)>
<歌壇には松田家の暮しあり一人暮しに詠めない暮し(福山市 小林加悦)>⇒佐佐木幸綱選:
⇒佐佐木選から、三首も引いた。十亀さんも常連の入選者だ。和泉市の長尾さん、「歩けなくなれる」とはどういうことなのか。「あるけなくなる」ではないのだ。長尾さんは、不治の病と共に暮らしている方だ。

<大人になるのイヤだと言ったら友笑う私たちニ十歳大人ゼロ歳(富山市 松田わこ)⇒高野公彦、馬場あき子共選: 松田さん、二十歳になったのだ。今後、どんな歌を詠んでいくのか、興味がある。
<春という卵身ごもっているような雨水(うすい)の空の雲のまろみよ(川越市 津村みゆき)>⇒高野公彦選: すごい比喩だね。

<傷兵のために輸血の準備までしたとの記事に朝が冷えきる(東京都 十亀弘史)>
<洋服を着て抱っこされ散歩する犬の哀しさ人の幸せ(熊谷市 飯島 悟)>⇒永田和宏選: ⇒永田さんの選評はこうだ。「十亀さん、まだ大丈夫と思っていた頃、既に臨戦態勢に入っていた当時国の覚悟を知る。」そうなんだ。驚いた。ロシアのウクライナ侵攻は、2月24日だったから、十亀さんのこの歌は、その前に詠まれているんだ。

<心なしか人出少なき公園の鹿の目濡れて春の足音(多摩市 谷澤紀男)>
<道に出て翁の帰宅を待っている庭に離し飼いされている山羊(前橋市 荻原葉月)>⇒馬場あき子選: 馬橋には、山羊を放し飼いしている人がいるんだ。「忠犬ハチ公」ならぬ、「御利巧山羊さん」だね。

 今週は、以下の歌を射選んだ。

洋服を着て抱っこされ散歩する犬の哀しさ人の幸せ熊谷市 飯島 悟)
 こういう風景をみると、犬への虐待なんだと思っていた。